破天荒フェニックス オンデーズ再生物語

『破天荒フェニックス』株式会社オンデーズの実際の社長である田中修治氏が、当時オンデーズの事業再生中に起きたことをもとに書き上げた自叙伝風フィクションです。中身はまさにタイトル通りの破天荒っぷり、不死鳥フェニックスっぷり。常人ならすぐに燃え尽きてしまうような場面に何度遭遇しても、そのたびに灰の中から再生し、ふたたび輝きを放ちます。

株式会社オンデーズ

2008年、デザイン企画会社を経営していた主人公・田中修治は、14億円の短期借入金を抱えたオンデーズを個人で買収する決意を固めた。当時メガネ業界には圧倒的なガリバー企業がないと踏んだ田中は、“メガネ界のZARA”を目指し、100人が100人「絶対に倒産する」と言い切る“街の眼鏡屋さん”オンデーズを、“世界一のメガネチェーン”にすべく立ち上がる――。

主人公の田中修治こそ、株式会社オンデーズ社長の田中修治氏です。この自伝ともいえるエンターテインメントビジネス小説『破天荒フェニックス』には、事業を成功させるためのエッセンスが詰め込まれており、カテゴリーとしては小説なのですが、自己啓発系の内容に仕上がっています

イメージを現実にする行動力

田中社長は、突然14億円の借金を抱えるメガネチェーン店の代表取締役社長になります。その理由が「圧倒的な差がないメガネ業界でなら、なんとなく自分でも勝てそう」だと、漠然と感じたから。

借金まみれの中、新店舗のオープン、雑貨チェーンの買収、価格設定の変更、海外進出など、怒濤の改革に打って出ます。

田中社長のたぐいまれな行動力の根底には、「自分の思い描く未来を信じぬく力」があるように感じさせます。

本書の後半では、たびたび「倒れるときは前向きに」という言葉が出てきます。

オンデーズの個人買収に踏み切らなかったらこのドラマは生まれませんでした。失敗をしながらも前に進み続ける姿はまさに“不死鳥”。経営は結果がすべて、そのためには「動くしかない!」という強い意志が文章全体にみなぎっています。

経営者やフリーランサーは、やるかやらないか、変えるか変えないか、常に意思決定を迫られています。そんなときには、「不確定だから今のままでいいや」と思うより、「倒れるときは前向きに」夢のあるほうへ賭けてみるというのは、非常にキャッチーで好きな表現でした。

苦境でも勝負をかける逆境力

革新的なコンセプトを掲げたライバル会社の快進撃を受けて、オンデーズは出店競争に敗れつつありました。次第に田中社長は海外に活路を見いだしていきます。資金は底をついていましたが、海外の可能性にかけて半ば無理矢理シンガポール進出を果たしました。

ここからは、どんな状況になってもとどまらず勝負する大切さが描かれています。

2011年3月11日、東日本大震災が起こり、オンデーズの10店舗も被害に遭いました。さらには停電の影響もあり全体の4割の店舗が1カ月以上まともに営業できない状況に陥ります。「倒産」という言葉が頭をよぎるような苦しい状況下においても田中社長は「社長の自分が不安を見せたら社員はますます不安になるだけ」と平静を装い、早期の業績回復を図るため即座に資金繰りの指示を出します。

そして震災から5日目には、休業中の店舗在庫を利用したメガネ無料配布ボランティアを企画、2週間後には自ら被災地の避難所を巡りました。

メガネの無償配布は被災した方にとても喜ばれました。また、この経験から「メガネは人の生活に欠かせない必需品」だと再認識した田中社長。震災後の苦境もなんとか乗り越え、業績は一気に回復。オンデーズは躍進を遂げていきます。

努力だけではどうしようもできない外部要因が立ちはだかったときこそ、チャンスと捉えて一手を打ち出す。その勇気と発想を常に持ち合わせていることが、どんな状況でも前進できる秘訣なのかもしれません。

誰よりも動いて、頼もしい仲間を引き寄せる信用力

スティーブ・ジョブズのそばにスティーブ・ウォズニアックがいたように、成功には優秀な右腕や仲間が必要不可欠です。田中社長は全店舗へ赴き、社員と直接顔を合わせて意思疎通を図りました。

社員やフランチャイズオーナーで見込みのある人物をチェックし、いざというときに重要なポストを任せています。立候補する従業員の意見を尊重し、即座に異動を指示します。

田中社長の周りには、彼の理想を実現すべく、力強い仲間たちが集まってきます。経理担当の奥野良孝氏を筆頭に、10年来の付き合いの仲間、買収した雑貨チェーン社員、フランチャイズオーナー、メガネフレームメーカー社長など、皆が田中社長に吸い込まれるように、ともに夢を実現するために奔走します。

素晴らしい仲間が集まる秘密は、田中社長の行動が信用を積み上げているからでしょう。

オンデーズ買収後、まずは60店舗すべてに直接出向き、一日中店頭に立ち、仕事終わりには社員を居酒屋に誘い、腹を割って話し合いました。

さらには、絶対にリストラは行いませんでした。自らが率先して働き、社員を守り抜くその姿が全員の結束を高め、困難を乗り切る大きな原動力になったことは間違いありません。

生き方

物語を通じて、「自分はどう生きたいのか?」を考えさせられる一冊でした。

男なら荒れる海を越えていけ。そして自分を試してみろ。広い大海原で思うがままに舵をとれ。迷子になればまた港に帰ってくればいい。若いうちにしかできないことをやらなきゃダメだ。

誰も漕ぎ出していかないような荒れる海だからこそ、そこを乗り越えたときの価値は大きいと思います。そして、そんな環境で自分が、もしくは自分たちがどこまでできるのかを試してみたい。

企業は「人」そのものなのだ。優秀な人を惹きつけることができなければ、企業は経営者の能力以上には成長しない。

革新的な行動挑戦する意思。そして、仲間を思う心

当たり前のように言葉ですが、リーダーはこれが大切なんだと改めて気づきました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です