『苦しかったときの話をしようか。ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』

著者はUSJをV字回復させたマーケターの森岡毅氏。ビジネスの最前線を生きてきた実務家としての視点で、娘に将来の仕事のことを考える際に必要なフレームワークと、学校では教えてくれない世界の真実を伝えているアドバイス的なビジネス書。大学卒業前の娘に対し、「何をしたいのかわからない」「何から始めていいかわからない」と悩む時に読むべき傑作だと思います。

世の中には「やりたいことがわからない」と悩んでいる人がたくさんいる。やりたいことがわからない原因は、自分のことをよく知らないことにある。 問題の本質は外ではなく、君の内側にあるのだ。やりたいことがみつからないのは、自分の中に「軸」がないからだ。そして軸がないのは、君が就職のサイコロを振るこのタイミングまで、自分自身を知るための努力を十分に行ってこなかったことに起因している。

どんなことでも良い悪いを判断をするには、基準づくりが必要なんだなと思った箇所。ビジネスでいえば何かを判断をするには、その仕事に近い事例のインプットを行って基準を作ることが必要だと思います。自分を理解して、自分独自の基準(軸)をつくり、それをブラさずに生きる事が重要なんだなと思いました。

自分のことを知っている度合いをSelf Awarenessといい、幸福を掴みたければ、このSelf Awarenessを高めることが必要である。なぜなら成功というのは必ず人の強みによって生み出されるものだからだ。その成功を生み出す強みこそが、あなたの「宝物」である。この「宝物」は誰もが持っているものだ。自分の中での相対的な特徴(≒強み)が、「宝物」になるか、「弱点」になるかを決めているのは文脈である。同じ特徴でも状況によっては弱点になりうるのだ。

キャリアを考える上で重要なのは、その人が持っている特徴が強みに変わる文脈=環境を探して、その勝ち筋を考えることだと言っています。強みを生かせる場を見つけ、勝てる戦いをしていく事が大切。その場は、就職活動や転職活動において正解はたくさんあるが、むしろ不正解は一つしかないといっています。それは自分にとって決定的に向いていない仕事についてしまうこと。それ以外はみな正解。

生きていく上で、この考え方はとても重要だと思います。常に正解だけを選ぶことは不可能で、禁忌肢を選ばない生き方をしていくという事。ポジティブシンキングに繋がると思いますが、苦手な分野では何をやってもうまくいかないですし、必ず挫折してしまいます。

この世界は残酷だ。しかし、それでも君は確かに、自分で選ぶことができる!

これも素敵な言葉です。人生とは平等にはなっていないけど、少なくとも「選択権は自分にある」という言葉です。

資本主義は、人間の「欲」をエネルギー源にして、人々を競争させることで社会を発展させる構造を持つ。「欲」の強さは正義である。欲を求める力、すなわち欲求の強さはこの世界を生き抜くためのその人のエネルギーの強さに等しい。できるだけ欲を持たないようにしてる人は、欲を満たせない苦しみや、実現できない自分に落胆して傷つくことから逃げているだけかもしれない。

日本の教育の最大の課題の1つは、自分が何者で、どんな特徴があって、どんなときに幸せを感じるから、どんな職について、どんな人生を送りたいか、そういうことをほとんど考えさせない事にある事を解いています。

自分で色々考えられない人は、本人が悪い訳でなく、日本の教育が悪いという、一見根源を外に向けてしまうような表現です。しかし、私自身、この考えには大いに賛成です。そして、逆に自身で思考できる人、本当の意味でクリエイティブでアグレッシブな人が、稼いでいる人にはとても多いです。

納得性と一貫性

最終的には、自分の中身を吟味したうえで、勝てそうなフィールドを自身で選択し、それに納得した上で、一貫性・軸をもって生きる事が大切だと言っています。

さらに、生きるため、稼げる場所に就職するのですが、その場所の中でも「一番やりたい分野」に就職しなさいと。ライフシフトで書いたように、今後は定年まで長く働く必要があります。ずっと仕事を楽しくやっていくために、得意&興味のある分野を、 Self Awarenessを高めて選択していかなくてはいけません。

働くことの本質

この本の中で、働くことの本質についての素晴らしい文章がありました。

働く事の本質は、自分の持って生まれたものを活かすのが楽しいということを理解する事。なぜ楽しいかというと、自分が世界に働きかけたその反応が見えるから。自分が生まれてきた意味、存在する価値を自分で実感できる瞬間がそこにある。世界と自分の接点ができるから。世界に働きかけられるのは、やはり自分の強みを活かせたときである。自分の持って生まれた特徴でもって、世界に対して働きかける、その道筋さえ見つけられれば、それぞれの人なりに楽しい人生があり得るはず。

何のために生きるのか、何のために働くのかの本質がここに書いてありました。それは、働く事で世界と繋がり、それが楽しければ自身の価値を見出せる。そして、得意分野で強みを生かせる時にその傾向が強いと。

働いて成功する人の定義もしています。生まれながらのスーパーマンのような人ではなく、何でもない普通の人でも、成功する可能性は十分あると。それは、自分の特徴を理解している人であって、宝探しがちゃんとできた人、発見の成功者が成功していくと伝えています。

この他、「考えるためのフレームワーク」なども紹介されていました。社会人をある程度経験した人からすると至極一般的な内容の事でしたが、とても分かりやすくまとまっています。

もっと早く、できれば高校生や大学生のうちに読んでおきたかった一冊でした。

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