参考文献
- 21世紀の資本
- ピケティ「21世紀の資本」を日本は突破する
- これからの経済学
- 格差と民主主義
- 見るだけでわかるピケティ超図解
- まんがでわかる ピケティの21世紀の資本
ピケティとは
トマ・ピケティ(Thomas Piketty)。フランスの経済学者で、1971年生まれのまだ48歳のおじ様です。22歳でフランス最優秀経済学賞を受賞し、世界のMITで教鞭をもつほどの天才です。しかし、彼はそれまで当たり前だったリカード、マルクス、クズネッツなどから始まった「経済学の基礎」が、実は間違っているのではないかという、壮大な疑問をずっと抱えていました。 結果、MITでの栄光の生活を捨て、研究者に戻り15年間富の分配のついて、20か国300年分の経済のデータ調べつくしました。
歴史比較の観点からの経済を研究し、700ページにもわたる論文のような大作を書き上げました。それを収めたのが「トマ・ピケティの新・資本論」という分厚い本。前評判ながら、論文ベースなので経済学に詳しい人でないと読み込めないほど難しいです。私も本屋で立ち読みしましたが、理解ができず、結局分かりやすく書き直された参考文献のような本理で理解するようにしました。
2015年にピケティブーム
2015年、本が出た当初、ピケティの理論は世界中でブームになりました。世界経済をマクロでみるかミクロで考えるかの違いもありますが、ピケティはデータとその考察を示したにすぎないので、その解釈と未来予想図には大きく個人差が出てしまい、世界中で論争にまで発展しました。2015年時点の私は、「頭のいい人たちが、よくわからん論争しとるな」くらいしか思いませんでしたが、あれから4年、色々と勉強し続けたので、今ならその論争に加わることができると思いました。
高所得者の偏移
ピケティは、まずは高所得者の数、分布について、主要30か国すべての300年間の長期データを解析し、統計処理されています。すると、上位所得層のシェアの長期的な動きには、日本を含む主要国で共通のパターンが観察されることがわかった。
第1次世界大戦までは、上位所得層のシェアは高い水準で安定していた。その後、第2次大戦直後にかけて大きく低下した。その後、1980年代から再び上昇し、特にアメリカでは21世紀初頭に高い水準に達している。
さらに、それ以後、実はずっと右肩上がりに格差が広がっているのがわかりました。
普通の経済学
- 資本主義の発展とともに富が多くの人に行き渡って所得分配は平等化する。(格差の縮小)
- 資本と労働の収益率は等しくなる。
- 資本収益率>労働生産性 ⇒ 投資↑ ⇒ 資本収益率↓ ⇒ 資本収益率=労働生産性
- 資本蓄積が増えると資本収益率(r)が下がり、蓄積は止まる。
というな、理論的な経済学の常識が、現実的には当てはまっていないじゃないか、という統計処理したデータをピケティは発見し、これの理由についてピケティ理論として新たな経済学として提唱しています。
ここがピケティの肝
ピケティの言いたいことは、 ピケティの代名詞と言われる 「r > g の関係」という関係です
(r) Rate of return of capital 資本収益率 r = 資本収益 / 資本
(g) the economy’s Growth rate 国民所得の成長率 g = 今年の所得 / 昨年の所得
と定義されます。分かりやすくすると、
Return > Growth ⇒ 投資のリターン > 経済成長
の場合、経済格差は拡大する。つまり、金持ちはもっと金持ちになりまっせと。
具体的に説明
戦後、アメリカを中心とした高度経済成長が起こり、世界中で年4%成長という右肩上がりの経済成長が起きました。普通に働けばお金がもらえ、賃金はどんどん上がっていきます。その時は、r < gの成長速度であり、富は「働いた人」に多くもたらされるような資本主義を形成していました。
その後、現在のような経済が成長期から成熟期になると、先進国では経済成長具合は少しだけ。逆にBRICsをはじめとする途上国は成長していきますが、そこにはお金持ち達の投資したお金で成長しているので、そこから得られるリターンはまたお金持ちが独占します。r > gそのもの。
日本はというと、貯金好きなためお金を使わない国民なので経済が回らない。そうなると、富の再分配はさらに起きにくくなり、もともとお金持ちの人の子孫が、そのままお金持ちという構図になります。富の再分配が少ないため、経済成長しないのを自分達で作り上げている国民性なので、r > g。
他の原因
上記ピケティ論について、原著では700ページにもわたり理論を展開しています。ざっくりしか目を通していませんが、正直よくわかりませんでした。
その理論についても、経済格差はこんな簡単な式だけでなく、たくさんの因子が絡んでいることも説明されています。例えば
- 教育とテクノロジーの競争で決まる賃金
- 専門的な労働者の供給は敎育に依存、需要はテクノロジーに依存。
- 米国のエリート大学の学費は極端に高く、親の社会的地位や寄付も必要。
- スーパーマネジャーの出現 ⇒ 労働市場が流動的になったため。
- 遺産相続
- 累進税率の低下 ⇒ サッチャーやレーガンの「保守革命」(80年代)
- タックスヘイブンに隠された資産
など。例えば相続などは左図のように考えると、大人6人分が一人の子供に将来的に集中することになります。
高齢化、人口減少が進む日本のような国では、このような多重相続による金持ちが増えていくことになると説かれています。
ピケティの結論は?
こうなると、もはやどの国もr < gであり、格差社会が広がるのは止まりようがないとピケティは警告しています。これを打破するための方法として、他の本でもあるような個人の才覚で上に上がりやすい時代にはなったので、時代の特性を生かす事を上げています。20世紀までのヨーロッパは、上位10%の貴族階級が全資本の9割を牛耳っており、下から這い上がる事は不可能という時代もありました。その時代からすると、なんとチャンスにあふれているのかと説いています。
また、グローバルな資本課税制度を提案しています。世界的な金持ちは、国際協議の中で課税することで、タックスヘブンや所得逃避行為が止められるのではないかと。そして、この結論こそ、「所得の再分配」として、世界中で議論の的となった結論でした。金持ちからすると、このままずっと金持ちはいい事なので、このような考えは否定的になります。逆に、正義的、全人的な学者たちは、とてもよい案だとして祭り上げました。
私たち日本人は、この定義では基本的に金持ちの方に分類されます。世界には月収数万の貧しい国がたくさん存在します。ピケティの結論では、
日本は豊かなので、相続税を増やして、それを世界の恵まれない子供たちに配るべきだ。そうする事で、教育格差がなくなり、貧しさから脱せる。そうすれば、人間は争いなく、平和に生きていけるのではないか。
この結論に対し、意見を言うのはやはりお金持ちの国の人が、反対意見を言うのが多いです。というのも、貧しい国の人は、母国語に翻訳されていなかったり、本が高いためにこういった種類の本を読めません。そのため、この論争自体に参加できなかったというのが一番の理由でした。
結果、この世界中の議論は、「利己的」vs「偽善・全人的」な考えに繋がり、宗教や人間観の考えがベースになってしまい、中途半端な討論で流行が終わりました。
個人では、どう考えればよいか
前提として、ピケティは経済学者であり、めっちゃいい人です。彼は、この法則を考えた上で、どうすれば世界中の人が幸せに、格差が無くなって暮らせるかを考えています。
日本を始め、世界中の人が、資本主義を基本としており、「いい大学を出て、いい就職をして、お金持ちになっていい暮らしがしたい」と考えているのではないでしょうか。しかし、ピケティはその前向きな気持ちは大切と言いつつも、富裕層になる事には否定的でした。
「親がお金持ちでないと、いい教育を受けれないからいい大学へ行けない」というビックデータも存在します。そのため、自分達はお金持ちになり、子供に教育させてお金持ちの層にいたいと、利己的に考える人が多いです。
ピケティは、「教育の環境が整っていない国」を強調しています。日本の中で頑張っている人と頑張っていない人は比較していない。マクロな視点で、世界中で教育は平等なチャンスであるべきと説いています。
こうなると、日本に生まれた時点で勝ち組感がわいてきます。実際、仕事しなくても生活保護制度でアフリカの人達の年収の10倍以上もらえ、最先端の医療をタダで受けることが可能です。この事実、現実に対し、ピケティは「世界中にいる、本当は天才的な才能があるのに、教育の機会がないために埋もれてしまった多く人を救わないと、人間は人類として地球上で生き残るチャンスを失いかねない」というような事を伝えているんだと思います。
最終的には色々考えさせられ、経済学の本のはずが、宗教的な本、考え方の本だという認識に変わりました。私も現在NPO社団法人を作り、世界中に学校と教育を届けていきたいと考えていますので、ピケティの理論にはある意味賛成です。しかし、やはり自分もいい生活したいし、自分の代で築いた資産はそのまま子供たちにあげたいと考えてしまう弱い部分がありますね。
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